こんにちは木村です。今日は個人的に衝撃を受けたドキュメンタリー(動画)を紹介します。
始めにお断りすると、刺激の強い内容だと思います。「成功する人としない人の現実」が露骨に映っており、他人事ながらハラハラしました。これ観ちゃっていいのかな?と個人的に…他の人はどう感じるか解りませんが…。
Youtubeにアップされては削除されています。以下で見られるかも。

第21回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『サヨナラニッポン ~若者たちが消えてゆく国~』
(制作:フジテレビ)「お待たせ致しました。カスタマーセンターです…」
今、日本からの問い合わせの電話の一部が、中国・大連に転送されている。電話を受けるのは、現地採用された時給300~500円で働く日本人。彼らは日本を捨てたのか?それとも日本に捨てられたのか?加速する若者たちの「日本離れ」の実態を追う。
<8月22日(水)26時40分~27時35分>
https://www.fujitv.co.jp/b_hp/fnsaward/21th/12-296.html
動画の主役は「仕事で中国へ渡った日本の若者達(当時20-30代)」です。製作は2012年とのことで現在は状況も変わっているでしょうが、ザックリ言えば
- 「中国が経済的に力をつけてきた」
- 「日本国内では高学歴でも良い就職先がない」
- 「あっても派遣とか奴隷みたいな仕事しか無い、希望ある将来が描けない」
現実の中、ならばと日本を飛び出した3タイプの若者達の奮闘を追ったドキュメンタリー。希望を求め中国へ渡ったのは全員共通ですが、それぞれ文脈には少し違いがあります。
中国へ渡った若者3タイプ
A 新興国の活気(ビジネスチャンス)を求め新卒で渡った人(20代)
B 日本で就職するも奴隷労働(派遣)しか無く状況の打破を求め飛び込んだ人(20-30代)
C 日本人相手の商売を中国で起業し奮闘する人(30代)
三者三様、実在する人の物語に引き込まれました。
※ネタバレですので、観てから読みたい方はこの先ご注意ください。
タイプA 中国タワ-マンションに帰宅する20代日本人男性(SE)
Aは新卒の就職先が中国だっただけのタイプ。何かに失敗してとかではなく、むしろ挑戦する気概を最初から持っています。
大連のセキュリティ堅牢な超高層マンション。豪華な内装と若さがアンバランス。漂う中国と日本の物価差。(当時)想いが共通していそうな同志達と談笑する様はすでに勝ち組の風情。
しかしビジネスの成功を掴む訪中である以上、必死で中国語を勉強する姿も映し出されます。
タイプB コールセンター勤務(日本語のみオペレーター)
次に「卒業後日本に良い仕事が無く、中国に希望をかけた」Bタイプ。ここに当てはまる人が数は一番多そうでした。
当時の構図
- 人件費の安い中国にIT系企業がコールセンターを作る。
- その人材募集、コールしてくるお客様は日本人のため就業は日本語が話せればOK。
- だから(職場は中国だけど)日本人就職歓迎!Welcome!
今更「そういう状況あったんだ」と驚きでしたが、取材当時、日本人の中国就職を斡旋する業者はとても多かったようでした。
日本と同じ派遣労働。しかも現地レートの給与。働き手に目立つメリットもなさそうですが、勤務地が中国というオプション。
そのため「生活費が(日本よりは)安い」「中国ビジネス事情理解(および中国語)という付加価値をつけて帰れる(かもしれない)」等の目算もあったのではと思います。
とにかく今より良い何かを求め、中国まで行ってコールセンターに勤務した彼ら。その一人「張替(ハリガエ)さん(37)」(珍しい苗字)の生々しい中華ライフに心を揺さぶられました。
中国の日本人コールセンターオペレーター張替さんの日常
向上心が無い(3年も中国にいるのに中国語話せない&話す気もない、日本の居酒屋で日本人同士おしゃべり)
不経済な生活(日本語が通じるだけで地元の何倍もする美容院、コスト高の和食や日本の漫画本・それなりのマンション)
しみついた奴隷根性(中国人後輩にあと5年は(上司に)自分の意見いらないとアドバイス)
詳しくはご覧いただくとして結構ショックな日常が展開します。何故ショック?伏線として、「より良いキャリアを掴む、チャンスを作り出す」そういう希望を抱いて中国に渡ったことを(観客の私は)知っているから…
なのに張替さんの日常は一言でいうと「危機感が無い」(;^ω^)
輸送コストぶん高価な日本の漫画を読み、割高なおにぎりを食べ、日本を出た時と技術や知識に大した変化もない…中国にいて中国人と話しているのに「日本語でお願いします」
いや本人がよけりゃいいんだけど、やはり向上心という感じはちょっと無いよね、という日々が無防備に映し出されます。
努力する中国人オペレーター達

いっぽう、中国から一歩も出ず日本語を習得、日本語対応コールセンターに勤める中国人達。
彼らの月収は地元の中国語しか話せない人材の2-3倍。中国で外資企業に勤める彼らの年収もポジションも、日本人コールセンターオペレーターの上を行く印象です。
(オフィスの机レイアウトがすでに違う。日本人は狭いブースに区切られた「島」、外資中国人オペレーター達はスペースにゆとり)
これもキツイ!(→o←)個人的に残酷描写でした…
でもどう考えてもそうだろって、観てると納得しちゃうんですよ( ̄▽ ̄;)
だって努力の量が日本人オペレーターと全然違うし。意識も違うし。
ついに張替さんは若い中国人彼女に「日本人オペレーターの長所は日本語が話せる事だけ」とか、ミもフタも無いことを言われ。(ちなみに彼女は日本語ができる)
このへんは観てるこっちの心が痛かったです。(´;ω;`)
だって、その通りだし。( 一一)
日本優位=すでに昔話
2018年2月検索時、中国のコールセンター求人はありませんでした。現在はもう日本人より向上心あって日本語話せて安い、中国の人達にポジションを奪われているのではと思います。
その流れで張替さんタイプの更に一段下のような、より経済的にきつそうな境遇の男性も登場します。男性の1人暮らし、海外。何の事情があるのか、這い上がろうと思うことすらも止めてしまったような印象が心に来ます。このさみしさも強烈でした。
全体に淋し気な日本人とイケてる中国人の対比が鮮烈でショックでしたが、まだ優位国と誤解している人VS超えていく新興国人という構図がリアルでした。
イケイケとも奴隷とも違うタイプC
このような「ガツガツビジネスチャンス狙い」あるいは「日本の奴隷から中国の奴隷に」の若者達が映し出された後、そのどちらとも違う日本人が出てきます。
苦労の連続
明田さん(37)は日本人相手のWEBサイト作成業を中国で起業。でも登場した舞台は病院。過労で入院中、病床から部下に指示電話しPCを叩く経営者そのものの姿から始まります。
行きつけの美容院は地元民も行かない薄暗い格安店、洗濯機は二層式。自宅も質素でタワマンどころか、中級マンションですらなさそう。
作業時間の長引くWEB製作業ですが日本の常識が通用するわけもなく。ろくに日本語も話せないスタッフは残業ボイコット、一人オフィスで製作を続ける描写も。
身を削る苦労の中、法事で帰国。老父を案じ涙を流しつつも中国に戻っていく明田さん。。
思わず成功してくれと思わずにいられませんが、幸い番組の最後に彼の会社スタッフが増え、商売が軌道に乗り始めたシーンが。観る者の心にも光が差し込みます。
こうでなくっちゃ…
簡単にいうとそんな話です。観終わった後、すごく余韻が残りました。
「目標がなければ実現もしない」その実例
本作の中心人物コールセンターの張替さんは「何かを変えようと海を渡るも、ずるずるとその日暮らしで結局、希望が見つけられない人」代表として登場します。
また実際やらせかと思うほどそれにふさわしい言動をします。(*ノωノ)
Youtubeコメント欄には彼に手厳しい言葉が並び、彼にこの取材メリットあったのか?同情したくなるほどですが…
私は彼は身をもって大切なことを教えてくれた感謝すべき人と感じました。彼を非難できる立派な日本人ってそんな多いのか?というのが正直な気持ちです。
この動画になぜ自分は惹きつけられたか考えてみました。
- 中国の台頭と日本の没落がよく解る(中国に日本人が出稼ぎに行く時代、向上心でも中国人に完全に負けている日本人)
- 経済のグローバル化と現代の奴隷労働が映っている(いくら働いてもポジションや年収上昇の可能性がない人生が珍しくない)
- 就職氷河期世代の奮闘を描き、同世代として身につまされた
「中国へ渡った(2012年当時)20-30代の若者達」は私と同世代。そのリアルな戦い!…こうなろうああなろうと思っていたのに生活に流されていく姿、身につまされる(→o←)
でもこの人絶対成功しないでしょという印象もぬぐえません。。ありのまま映しているだけだけど(~_~;)それが(個人的に)チョー残酷映像でした。
沈んでいるのに気づかない人、追い抜いていく人
もっともこの作品は世代を超え多くの人に響いたようで、削除前の動画投稿へのコメントは1,000件を超えています。
やはり多くの人を揺さぶった一番の理由は
- 「成功する人」「しない人」の具体像が(現実の人生として)映っている
- 「成功しない人」のメンタリティが今も「日本人の主流派」かもしれない
- そしてそれがどれほど「未来が無い価値観」か、リアルに解ってしまう
からかなぁ…と思います。
まだ日本のどこにもいそうな「張替さん」の未来は無いことがヒシヒシと解ってしまう。
「張替さん」には向上心が無く、対等に勝負できる能力も無いくせに外国人を意味なく下に見て、油断しきっている日本人の危機感の無さがよく出ていたと感じました。
外資企業にいた時、フィリピン人同僚は3か国語が話せました。でも上司達は米国本社との連絡係にしか使わない、大事な話もしない。(彼も割り切っていましたが)
その上司二人は残業の長さで知られ(^-^;今どき解りやすい「無能」…とてもそのままの状態が長く続くとは思えなかったですね。(現実に業績どんどん悪化してました)
日本国内のマーケットが大きく、国内の人間だけを相手に商売していればいい時代はそれでもよかったかもしれません。でももう日本の人口はしぼんでいるし、世の中、年寄りばかり。
今、金持ち=中国人
最近、訪日中国人向けにデパートが臨戦態勢という記事を新聞で読みました。一旦落ち着いた「爆買い」も堅調に盛り返してきたようです。
今や金持ち上客は日本人じゃなく中国人です。それは2年前卒業した大学院の同級生に占めた中国人学生の比率を思い出してもうなずけます。
2年ほど休学し復学したら定員一杯になっていて、その増分は全員20代の中国人でした。欧米の学校よりは安いし、という感覚なんでしょうね。
目的を持った努力の大切さは普遍だけど
この作品には日本のいびつな労働環境、グローバル化、若年層の国外流出など多くのテーマが含まれていますが、観終わってみると
今よりいい未来を目指すなら、「目的を持ち努力しないとダメ」
だけど「もう先進国日本は終わった」
そんなことが腑に落ちたドキュメンタリーでした。
まとめ 闘い方を考える必要あり
- 沈みゆく日本
- 危機感の無い日本人
- 彼らを吸い込む奴隷労働
- それを超えていく新興国の人々
重い現実ですが、それも含めて興味深い動画でした。張替さんはふつうの日本人の危機感のなさを体現した人物として天が与えた役目を演じているようでした。
一方「勝ち組」に行けそうな明田さんも、病床から部下に指示を出す現実を生きており経済的成功はやはり簡単じゃない、とも突きつけられます。
自分の人生に希望を作りだせるのは自分だけ。この作品を観ていると明田さんのとこに来るまで救いが無いので、こうしなきゃと思うのは事実です。
でも、皆がみんな、明田さんみたいに起業できるわけじゃない。というか、もう日本は色んな面で終わっている。これが一番自分の心に残った事かもしれません。
私にとっては、苦しいのに目が離せない内容でした。
いろいろ観た後が重いんですが、ご興味ある向きはぜひご覧ください。

(19/5/1追記) 事態はさらに進み、日本政府は特定技能とラベルを貼り換え相変らず奴隷として外国の若者達を輸入していますが、労働環境が変わらなければその人達に 捨てられるのも 時間の問題。
たとえばベトナムの経済状況が良くなれば、ブラック待遇しか無い日本にいる意味ないですよね。我が祖国は「失敗の本質」(第二次大戦)の往時から変化なし。
希望は捨てませんが、日本が先進国などという表現は完全に終了した実感があります。この動画を観たショックへ自分の答えが少しずつ見えてきたので、また追って書きます。
失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫) 文庫 – 1991/8/1 戸部 良一 (著), 寺本 義也 (著), 鎌田 伸一 (著), 杉之尾 孝生 (著), 村井 友秀 (著), 野中 郁次郎 (著)
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